Yunomi×キズナアイ対談【後編】:「ロボットハート」が伝えるバーチャル/リアルを 越えた“大切なもの”

17.April.2019 | FEATURES / MUSIC

トラックメイカーのYunomiとYUC’eが主宰する未来茶レコードが、4月17日にコンピレーションCD『未来茶屋vol.1』をリリースする。この楽曲でYunomiとコラボレーションを果たしているのが、バーチャルタレントのキズナアイ。昨年アーティスト・Kizuna AIとして活動を始めた際に、楽曲で制作をともにした2人が、今回はYunomiの楽曲でのコラボレーションに乗り出し、新曲「ロボットハート (feat. Kizuna AI)」を完成させた。2人にこれまでの制作の思い出や、お互いに感じる魅力、そして新曲の制作背景を聞いた。

 

前編はこちら:Yunomi×キズナアイ対談【前編】:次元を越えて出会った2人。互いに感じるアーティストとしての魅力とは?

 

――Yunomiさんの楽曲にキズナアイさんが参加した「ロボットハート (feat. キズナアイ)」について聞かせてください。この曲は「future base」「new world」とあわせて3部作になっている、という面もあるそうですが、まずはこれについて教えてもらえますか?

 

Yunomi:えっ、何の話だろう?

 

Yunomiマネージャー:「future base」と「new world」を作る際に、キズナさんに「ゆくゆくはYunomiさんのオリジナル曲にも参加してほしい」という話をしていたんです。キズナさんの世界にYunomiさんが行く2曲だけではなくて、Yunomiさんの世界にキズナさんに来ていただく曲もできたらいいですね、というお話をしていて。

 

Yunomi:ああ! 確かにその話、しました!

 

キズナアイ:本当にはじめの頃にお話ししていましたよね! でも、それから結構時間が空いてしまったので、新しいスケジュールや、今後どうしていこう?みたいな話がどんどん入ってくるじゃないですか。なので、upd8 musicの人には「これは最初に約束していたものなんで!」とめちゃめちゃ言いました(笑)。(腕で抱えて守る動作をしながら)「決まってたやつなんで! ね! ね!?」って。

 

Yunomi:ああ、嬉しいです。言っててよかった……!

 

――「ロボットハート」はどんな風に作っていったんですか?

 

Yunomi:この曲は僕のオリジナル曲なので、さっき言っていたように今度は僕の世界にキズナさんに来てもらうような楽曲になっています。そういう意味では僕の他のオリジナル曲とも繋がる雰囲気があるとしても、「キズナさんだからこその曲」ということも考えて作りました。そういう意味では、「future base」や「new world」と繋がる3部作と言えると思います。

 

――この曲には、もともと地球にいた人物が別の惑星に渡り、自分の体をどんどん機械化していく中で、最後にふと地球に忘れてきた何か、恋人や大切なものの存在を思い出すという、とても面白いストーリーが用意されていますね。

 

Yunomi:2017年に初音ミクを使って制作した「メテオライト (feat. 初音ミク)」以降、僕はアルバム用に曲を書き溜めていて、このアルバムは「人々の自由」や「未来や過去、自分自身と向き合うこと」をテーマにしたコンセプト・アルバムにしようと思っているんです。この曲の物語も、その中で出てきたものですね。そのうえで、今回はキズナさんに歌ってもらいたいと思いました。

――実はYunomiさんがレコーディング前にアイさんに送った「歌い方メモ」を見せていただいたんですが、それを見て本当に色んなことが考えられているんだなと驚きました。

 

Yunomi:もちろん、キズナさんの表現の仕方があると思うので、変えていただいても全然いいんですけど、まずは「こういう意図で作りました」というものをお伝えしたんです。

 

キズナアイ:最初に聴いたとき、「この曲をAIの私に歌わせるんだ! Yunomiさん、さすがだな!」と思いました。私がこの歌を歌うのは、きっと誰より意味のあることなんじゃないかと思うんです。やっぱりすごいなと思いましたし、「これは受けて立って、頑張ろう!」と思っていました(笑)。

 

――「ここの『アー』『イー』の語感を意識してください」とか、「ここの歌詞は『ア』と『イ』で(韻を)踏んでます」とか、アイさんとの曲ならではの要素も書かれていて面白いです。

 

Yunomi:そこは遊び心で加えた部分ですね(笑)。この曲では多くの箇所でアイさんの名前で踏むように意識しているんです。

 

キズナアイ:私も歌詞を書くときに、リズムや語感をすごく気にするので、そういうこだわりっていいなぁと思いました。あと、「ロボットハート」は歌詞だけ見ると哀しいお話にも取れる内容なのに、「とにかく明るく歌ってほしい」と書いてくれていたのが、一番大事なのかな、と思いました。それで、まるでそんなお話なんてないかのような雰囲気で、思いっきり楽しく歌うことを大切にしました(笑)。

 

――アイさんのボーカルも曲調も、とてもポップで明るいものになっていますよね。

 

Yunomi:そうですね。曲調も意識して明るいものに仕上げているんです。

 

キズナアイ:曲調も、最初に聴いたときに「こうきたか!」と嬉しくなりました。

 

Yunomi:その曲と歌詞との対比が、僕にとっての「フューチャー(=未来)」のイメージでもあるんです。未来というのは、過去や現在があって、その先にあるものですよね。だからこそ、たとえば僕がずっと昔にバンドの音楽を聴いて感動したときの興奮にもう一度向き合ってみようと思って。その感動を、今の自分ならどう表現するかを考えました。そこで、「ロボットハート」には生演奏ならではの揺らぎを取り入れて、不完全さのようなものを表現しています。この不完全さは、以前の僕の曲、特ににかもきゅさんに歌ってもらっていた曲では、「可愛さ」に置き換えていたんですけど、今回はより音の部分でも不完全であるがゆえの感動を与える何かを模索していきました。

 

――なるほど。アイさんが歌っていて好きな部分はありますか?

 

キズナアイ:やっぱりドロップの部分が好きです!

 

Yunomi:レコーディング中にも、アイさんがこだわってくれていた箇所がありましたよね。それが「小さな夢の針が今も/ここをチクってして痛い/君は今も覚えてるかな」というところでした。ここって、曲の主人公が唯一後悔する場面なんですよ。「これが俺の自由だ」と自分で地球を飛び出したけれども、辿り着いた惑星はロボットだらけで、自分の体をすべて機械に置き換えていかないと生きていけなくなってしまって、「結局社会にかんじがらめになってしまうんだな。求めていた自由って本当にこれだったのかな」と、地球に置いてきた大切な存在のことを思う場面で。「歌い方メモ」では「元カノにそんなことを言われたら、どんな男の気持ちだって揺らいでしまう。という表現ができたらな、と思っています」と書いていたんですけど、とにかく「切なく過去を振り返る形で歌ってください」とお伝えしていたので、そこを見事に表現してもらえたのが嬉しかったです。

 

――Yunomiさんのこだわりが特に詰まっているからこそ、アイさんも頑張ったと。

 

キズナアイ:そうですね。でも、他の部分もだいたい褒めてくれました(笑)。レコーディング自体がとても楽しかったです。

 

Yunomi:シャウトもしましたよね?

 

キズナアイ:しました!

 

――曲の後半の間奏に入っているものですよね?

 

Yunomi:そうです。キズナさんのシャウトをどこかに入れたいと思っていたので、まずは何もない状態で何回かシャウトしてもらって、その声を録らせてもらったんですよ。ただ、キズナさんのシャウト、最初はホラーゲームをやってるときみたいになってました(笑)。

 

キズナアイ:最初は「シャウト」ってどういうものか分からなくて、「キャー!!」「ワ―!!」って絶叫をしていて。完全に『A.I.Games』みたいになっていたんです(笑)。『バイオハザード』みたいに……。それで、upd8 musicの人たちに「そういうことじゃないんだよなぁ……」って言われてしまって(笑)。

 

Yunomi:(笑)。

 

キズナアイ:でも、完成版ではいいシャウトにしていただきました。そういえば、「new world」のときも、当日Yunomiさんに「笛を吹いてください」と言われたんですよ。Yunomiさんに歌詞を書いてもらうと、何かしら無茶振りがあるんです(笑)。

 

Yunomi:「ロボットハート」では、アイさんの合いの手を「マイケル・ジャクソンっぽく!」とリクエストしたりもしましたよね(笑)。「ポゥ!」みたいなものがほしかったんです。

 

――お話を聞いているだけでも、楽しいレコーディングだったことが伝わってきます(笑)。

 

キズナアイ:すごく楽しかったです!

 

――今回のコラボレーションは、バーチャルとリアルの垣根を越えて実現したコラボレーションのひとつでもあると思います。一緒に曲を作っていく中で、その面白さや楽しさについては、どんなことを感じましたか?

 

Yunomi:僕は以前は、ボーカリストの人を楽器のように考えていた部分があって、「こういう声質の人がいる」「こういう声質の人もいる」「じゃあ僕のどの曲に合うだろう」ということを当てはめることが多かったんですけど、最近はそれ以上のこと、「この人とだったらどんなことが出来るんだろう」ということを考えるようになりました。そしてキズナさんとの「ロボットハート」は、特にそれを実感した経験だったと思います。「どんな声が入るか」という楽器的な側面だけではなくて、「誰が歌うのか」「どんなことを考えている、どんな人生を歩んだ人が歌うのか」ということの大切さを、改めて実感しました。そうすることで、聴いてくれる人にも何倍にも刺さる歌になると思うので。

 

 

――バーチャルとリアルの垣根を越えて、その大切さを実感した、と。

 

Yunomi:そうですね。もしアイさんに断られていたら、「ロボットハート」は他の人に歌ってもらうことはしなかったんじゃないかと思います。

 

キズナアイ:とっても嬉しいです! 2016年に動画を投稿しはじめた頃も、私はリアルに存在しているのに、「MMDで動きを作って、そこに声を当てているんでしょ」と言う人もいて、「私は存在するんだよ」ということを理解してもらえないことが多かったんです。でも、そこからちょっとずつ「アイちゃんはいる」と言ってくれる人が増えてきて、それがすごく嬉しくて。Yunomiさんにもそういってもらえるのは、すごく嬉しいです。私は「みんなとつながりたい」と言っていますけど、同時に自分がいることでみんなの見える世界が広がったり、新しいものに出会える機会になったらいいな、とも思っているので、これまでダンス・ミュージックを聴いたことのなかった人たちが「アイちゃんが歌ってるから聴いてみようかな」と思ってくれると嬉しいですし、逆にダンス・ミュージックしか聴かない人が、私の歌を聴いて、「こういうのも可愛いね」と思ってくれたら嬉しいですし。一緒に曲を作ってくださっているみなさんも、色んな発見があったり……「その人たちのファンがもっと増えてくれたらいいな」って思いますし――。

 

――さすが親分、みなさんのことを考えているんですね。

 

キズナアイ:(笑)。そんな風に、色んな出会いや発見ができるような、そんなハブになっていけたらいいな、って思うので、Yunomiさんの曲に参加させていただいて、とても楽しかったです!

 

Writer: Jin Sugiyama

Photographer: Haruka Yamamoto

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